すごくどうでも良い話ですが、クリスマスの予定を聞かれクリスマス商戦を思い浮かべる彼(二巻)がものすごい好きです。ですよね!ってなる。
 彼は息をするように自然なオタクだと思っているので、多分家にはでっかい液晶テレビと1テラを越えるハードディスクレコーダがあると思います。携帯を二台持ちしてても驚かない。それどころか家中の家電リンクさせて外出先で動画見れるようにしてても驚かない。締めるところではきちんと締める人だとは思うのですが、普段は全力で四季とオタクを楽しんでそうだなーと。存在意義とかそこら辺はもうある程度悟ってる好々爺だと私が楽しい。かつて誰かに対して身を焦がすような恋をしてたなら倍率ドン!(何の)


 うっかり中身をつくってしまったら本稼働させるかもしれません。けれどその場合、本田さんと日本の四季を愛でつつ他の国を観察するサイトになりそうです。誰得俺得。

 あ、ここを作った人はさくらいといいます。一応。
 


 師走のはなし

 ふと気づくと両端に緑が茂る小径だった。艶のある深緑。それが紅を交えながら延々と続いている。
 彼の家の周りには昔からの古い屋敷が集まっていて、方々に見事な生垣が連なっている。しかし、この路地はまるで見覚えがない。後ろを振り返っても、同じような生垣が続くのみだ。さてどうしたものかと首を傾げて、彼は些か途方に暮れた。誰かに尋ねるにも、辺りはまるで人の気配がない。こんなことなら大人しくタクシーを捕まえるべきだったと思っても、それだって今更だ。こんな狭い路地に車が通るわけもなし、そもそも簡単に捕まえられるようならばこんな事態に陥ってはいない。
 昼前から降り出した雪の所為で、交通網は混乱をきたしている。地下鉄ならまだしも、地上を走る路線は全滅だろう。必然的にバスやタクシーを待つ人の数は増え、停留所には長い列が伸びていた。早々に並ぶのを諦め、地下鉄を乗り継いで可能な限り自宅へと近づいてはみたものの、さすがに最寄り駅までとはいかない。三駅ほどの距離なら歩けないこともないと食材両手に奮起して、歩いていたらこの有様だ。
 彼は、国の具現化だ。呼べば、車の一台ぐらい簡単に手配してもらえただろう。けれど、彼はそれを良しとしない。日常を生きる自分はあくまで普通の人間と変わりなく、また、そう扱われるべきだ。それは、彼の信念に近い。
 世界会議ではそうはいかないと、彼はもちろん分かっている。あの場での彼の発言は、行為は、国としてのものだ。好悪でさえも、彼自身のものではない。それは彼という国が有する人間の、可能な限りの総意である。別段、それが苦痛というわけでもない。これが彼の存在意義であり、また、勤めでもある。
 けれどだからこそ、普段の彼はただの公務員だ。さすがにそれはと周囲の人間が諌めるので、通常の公務員と同じ職場とはいかないが、彼自身はそれでも何ら構わない。ただひとりの人間として個人的な感情に身を委ねて生活している以上、特権的な力は行使すべきではない。それは彼にとって、呼吸と同じぐらい自然なことだ。潔癖と捉えられかねないリスクも承知してはいるが、彼はその考えを改めるつもりはない。
 雪は少しずつ気配を増して、視界を白く遮っていく。辺りはすっかり静まりかえって、誰一人通りかかる様子もない。彼の呼気が白く煙って、虚空にゆっくりと溶けていく。
 雪は音を吸うという。さもありなん、と彼は思う。先程まで騒がしい場所にいたから、尚更そう思うのかもしれない。
 彼は今朝から最寄りの繁華街に出かけていた。何もこんな時期にと言われながらも毎年律儀に足を向けるのは、そうせずには居られないからだ。年末商戦が苛烈を極めるこの時期の喧騒が、彼はけして嫌いではない。
 活気はそれこそ、生きるエネルギーの発露だ。景気の良い音楽やメガホン越しの呼び声があちこちで響き、ぱんっぱんっと鳴らされる手拍子に振り向けば沢山の数字と鮮やかな色彩が目に入る。街はざわざわと人の声がさざめきあい、波の様に寄せては返してを繰り返す。大掃除や料理の買い出し、餅つき、各種年越しイベント、そしてオタクの祭典まで。誰もが何かで忙しいこの季節、師馳すとはよく言ったものだと、彼は毎年のように感心する。
 気の遠くなるような年月を生き、様々な時代を経験してきた彼は、人の、様々な側面を知っている。良いところばかりではない。けれど、悪いところばかりでもない。活気溢れる街並に身を委ねていると、その事実がひたひたと身に満ちてくるのだ。
 
 ふと手元を揺らした振動に、彼はごそごそと袂を探った。程なく姿を現した四角く薄い端末には、メールの着信を告げる表示が流れている。こんな時期にどなたでしょう。そう思いながらメールを開こうとした彼は、はた、とその動きを止めた。そして力のない苦笑を浮かべると、迷いのない動作で地図を呼び出す。程なくして表示された現在地に、彼はまるく目を見張り、肩を落として苦笑した。普段使わない方向とはいえ、自宅から数百メートル圏内で迷子だなんて。いくら人間の寿命に合わせて住処を変えているとはいえ、もう五十年以上住む家だ。
「これはひどい……」
 思わず呟いた彼は、はっと顔を上げ辺りを見回す。辺りに人気がないのを確認して、彼は笑みを崩さぬまま、ふうと小さく息を吐いた。
 手元では依然、メールの着信を告げる光が瞬いている。彼は何気なくそれを開き、そして、その笑みを瞬く間に凍り付かせた。ぴしぴしぴしぴし。音をたて顔面がひび割れていくのが分かる。どうして……と呟く声すら、掠れてろくに音にならない。
 文字や事象が持つ意味は人によりけりだ。ある単語に対して嫌悪を抱く人間も居れば、好意を抱く人間もいる。ある人間にとっては気にもならないことが、ある人間にとっては爆弾以外の何ものでもないことも。
 ……だから、端末に浮かぶ「録画失敗」の文字が、彼に衝撃を与えて余りあるものだったとしても、何の不思議もない。
 えええええ、ええ、ええええ!?と、年甲斐もなく慌てふためきメールを読み進めた彼は、ある一点でスクロールを止める。そしてぶるぶると震える手で端末を握りしめるとzそのまましばらく沈黙し、やがてがっくりと肩を落とした。
 録画を失敗してしまったのは、百歩譲って良しとしよう。けれど、その原因がただの容量不足だったなんて!
「私、何年この趣味やってるんでしょう……」
 額に手を当てた彼は、はあ、と深く息を吐く。
「録画フローを改善しなくては……。あと、ハードディスクも買い足さないと……」
 でも、公務員て意外と給与少ないんですよねえ……。

 足元の雪が、さくさくと音を立てる。正月用食材を両脇に抱え再発防止策を練る彼は、紛れもなくただの日本人だった。
 本田さんでサイト作るんだったらこういうサイトだなあ、という模擬サイト。
 なぜ模擬かというとコンテンツが空っぽだからです。でも是が非でも作ってみたかった縦書き横スクロール。だって日本だもの。

 使ってるのは nehan.js です。縦書きJavaScript だと竹取.jsの方が有名ですが、こっちのほうがサイト構成には使いやすいかと。全てgoogle コードから引っ張ってこれて、使い方もそんなに難しくないので、縦書きをしてみたい方はぜひ。ルビこういうのも打てたりするよ。(詳細はこちら)まあ、CSS3 の縦書きがもうちょっときちんと整備されればわざわざJavaScript 使わなくても良いんですけどね……。

 MS 明朝のあまりの汚さにめげたので、Windows ではゴシック体表示です。Mac だと明朝体にアンチエイリアスがかかってるのでいかにも小説の誌面っぽい雰囲気に。
 




 ちなみに、長文を置くとこんなかんじ。